USP <1788.3> とサブビジブル粒子試験の背景(医薬品質管理)
USP <1788.3> が必要とされる理由
従来、注射剤や点眼剤に含まれるサブビジブル粒子(1〜100 µm 程度)の評価には、光遮蔽法(Light Obscuration / LO) が基準として使われてきました(USP <787>/<788>)。しかし近年、単に粒子の数とサイズだけで評価する方法は限界があると認識されています。
そのため、粒子の画像や形状、構造を捉える解析が求められるようになり、USP <1788.3> で「動的画像解析(Dynamic Image Analysis:DIA)」が光遮蔽法に対して 直交法(補完的な方法)として明示的に推奨されました。
ラプター1788は、米国薬局方USP <1788>(総則第1788章)に記載された、注射剤や点眼剤における「サブビジブル粒子(不溶性微粒子:目に見えないサイズの粒子)」の測定方法や評価基準に準拠している測定解析装置です。
動的画像解析は、これまで見落とされがちだった粒子の性質を捉えるのに必要です。
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タンパク質凝集体
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シリコン不溶性液滴
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フィブリルや繊維状異物
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不均一な混合粒子群の識別
これらは、透明性が高く、形状が不規則、屈折率が低い粒子が多いなど、LO光遮蔽法だけでは正確に検出・分類できません。
日本薬局方(JP)の粒子評価関連の一般試験法や運用で実質的にサブビジブルの評価が行われていますが、USP<787>の「タンパク質医薬品注射剤向けに特化した試験法」は、日本薬局方(JP)単独では独立した章番号としては存在していません。USP<788>は、≒ 日本薬局方(JP)一般試験法6.07『不溶性微粒子試験(注射剤)』として適用されています。
今後の改訂で、公定化される可能性はありますが、現時点でUSP<1788.3>に相当する日本薬局方(JP)の「書類番号」や「規格番号」は、日本薬局方(JP)に直接的な対応チャプターとして収載されておりませんが、参考情報として記載されている項目(G3-17-182)で触れられております。
今後の改訂で、粒子評価関連の一般項目(例:流動散乱法や動的画像解析法など)が追加拡充される動きがあり、将来的には USP<787>/<1788>に類する規格が日本薬局方(JP)でも明文化される可能性があります。
米国薬局方USP<1788>(治療用タンパク質注射剤中の微粒子異物)」に関連する画像解析技術について
USP<1788>注射剤及び点眼剤中の不溶性微粒子測定法の改訂により追加された、<1788.3> フローイメージング法による不溶性微粒子測定は、医薬品(特にタンパク質製剤や点眼剤)中の微粒子を、動的画像解析(DIA)を用いて粒子径・粒子数・粒子形状に基づいて識別・定量的・定性的に分析する手法で、従来の遮光法(LO)や顕微鏡法(MM)を補完する手法として、USP-NF 2021 Issue 1から導入されました。
USP <1788.3> DIA の概要
技術: 動的画像解析技術を用いて、液体中の粒子を画像化して解析
用途: 点眼剤や注射剤、特にタンパク質製剤における目視できないサブビジブル微粒子(1〜100μm)の特性評価
特長: 従来の光遮蔽法(LO)が全ての粒子を「丸形状」として計数するのに対し、撮像した粒子画像で形状に基づいた同定が可能
利点: 粒子数とサイズに加えて、粒子形状の情報が得られるため、微粒子の由来(外部汚染、シリコン液滴、タンパク質凝集体、バイオ医薬品・抗体医薬における不溶性微粒子など)を識別
測定原理と特徴
撮像:
サンプルを微細なフローセルに流して高速カメラで画像を撮影し、デジタル画像処理技術で各粒子の形状を解析
画像解析(DIA):
取得した画像にデジタル解析を行い、粒子の等価円相当径やフェレ径を算出
形状パラメータ:
アスペクト比(長短比)、円形度、凸面性などの指標を用いて、粒子がタンパク質の凝集体か、シリコン油滴か、繊維状異物かなどを分類区別
メリット:
サンプル量が少量で、製品の品質向上や製造プロセスにおける汚染源特定に役立つため、従来の分析法では難しかった粒子の同定に不可欠なアプローチとなっています
日本薬局方(JP)との関連性
USP <1788> は、日局(JP)や欧州薬局方(EP)との整合性(調和)が図られており、最新の国際基準に沿った改訂が行われており、日本薬局方(JP)の一般試験法においても、不溶性微粒子試験法(<6.07>)や動的光散乱法(<3.07>)など、粒子計測技術は継続的にアップデートされています。
| 項目 | レーザー方式 | 動的画像解析(ラプター) |
| 測定原理 | レーザー光の遮光量・散乱量から 粒径を換算 |
油中の粒子を高速カメラで撮像し、 個別画像解析 |
| 測定対象 | 粒子数・粒径 | 粒子数・粒径・形状・画像 |
| 粒子の可視化 | X(見えない) | ◎ (個別粒子画像) |
| 粒径定義 | 等価球形(全粒子丸形状と仮定) | 実画像に基づく実寸 |
| 粒子形状評価 | X | ◎ (形状解析可能) |
| 粒子分類 | X | ◎ (気泡水滴・凝集体等) |
| 異物識別 | X | ◎ (繊維・破片・異物) |
| 透明粒子 | X(影響を受け、不安定化) | ◎(安定して検出可能) |
| 屈折率依存性 | 高い | 低い |
| シリコン不溶性液滴 | 過大/過小評価の可能性 | 個別粒子画像で識別可能 |
| タンパク質凝集体 | 判別不可 | 凝集形状として識別可能 |
光遮蔽法(LO)の限界と 動的画像解析(DIA) の必要性
✦ LO光遮蔽法が不得意とする点
光遮蔽法は粒子の数と大きさを定量するには有効ですが、以下のような情報は得られません:
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粒子の種類の識別 - 形状や構造に関する情報
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視覚的な証拠(画像) - 起源・汚染源の特定
したがって、粒子測定結果の “意味づけ” を行い、根本原因解析や品質逸脱への対策(CAPA) を行うには不十分です
ラプター1788 の役割:USP <1788.3>への対応
◆ 概要
ラプター1788 は、ビジョン アナリティカル社が提供する 動的画像解析装置で、既存の光遮蔽装置に 補完的に追加できる形で設計。
光遮蔽法(Light Obscuration: LO)装置を置き換えるのではなく、既存の LO ワークフローに補完的に組み込むためのモジュールとして設計されています。この統合により、既存の LO テスト(USP <787>/<788>)を継続しつつ、粒子の画像と形状データを追加取得し、より深い解釈と解析が可能になります。
USP <1788.3> に対応するために求められる以下の要件を満たします:
✔ 粒子画像の取得
✔ 粒子形状・構造の定量化
✔ 異なる粒子集団の区別・分類
✔ 視覚的証拠の提示(レポート/画像)
✔ 既存 LOワークフローを 変更せず に追加可能
📌 ラプター1788 が提供する分析機能と品質価値
1)粒子画像 + 形態情報の取得
各粒子に対して次のような情報を同時に取得します:
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画像サムネイル
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形状指標(アスペクト比、円形度など)
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明度・透明度情報
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テクスチャ特徴
これにより、粒子の物理的特徴を解析し、粒子の種類を 画像に基づいて分類することが可能になります。
2)サブビジブル粒子の分類能力
高品質な粒子画像をキャプチャし、形状特徴(モルフォロジー)を数値化してレポートできます。
従来 LO では区別困難だった粒子を、形状や画像特徴によって次のような粒子タイプを識別・定量化できます:
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タンパク質凝集体
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シリコン不溶性液滴
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破片・ガラス片
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フィブリル・繊維状粒子
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ゴムやエラストマー片
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製造・包装工程由来の異物
これは、医薬品製剤・バイオ医薬品における品質管理で重要な能力です
📌 既存 LO ワークフローとの統合性
ラプター1788 の最大の利点の一つは、既存の光遮蔽システムを置き換える必要がない点です。
◎ 実装方法
🔹 スタンドアロン運用
ラプター1788 を単体装置として使用し、画像ベースの粒子解析を行うことができます。
🔹 既設のLO光遮蔽法装置との併用
LO による標準的なコンプライアンス測定後、同じサンプルに対して画像解析を追加することで、数 + 濃度 + 形状 + 画像 を同時に取得。これにより、USP に沿った情報品質を確保します。
📌 医療用途で重要な技術ポイント
✔ 高速分析によるサンプル代表性の保持
ラプター1788 は 高速測定(最大 200 mL/min 程度) を想定、サンプルの分散状態を保持しながら実用的な処理量で解析できます。
高速測定することによって、粒子の沈降や浮遊によるサンプル変化を抑制し、サンプルが本来持つ粒子分布を反映したデータが得やすくなります。
✔ 粒子貼り付き検出の低減
測定中にフローセルの窓に粒子が付着し、それが繰り返し検出されることで誤カウントが発生する問題を、ソフトウェア側で検出し排除する機能が搭載されています。この機能は、被検体中の細胞や粘着性の高い粒子などが混在する場合でも、データ精度を維持するために重要な機能です。
✔ 定量・分類ツールの活用
測定後の解析ツールとして、粒子の分類、相関プロット(Correlation Plot)、追加解析などの機能が用意されています。単なる数値データだけでなく、粒子種ごとの視覚的比較や調査・逸脱対応に必要な文書化と解析が行いやすくなっています。
📌 医薬品 QC における実用上の意義
✔ 高付加価値な QC データ
画像による粒子確認が可能なため、単なる個数・サイズだけの報告ではなく、粒子の実態を示す証拠を伴う QC が実現します。
✔ 異物・凝集体の識別
例えばシリコンドロップレット(容器からの由来粒子)とタンパク質凝集体(製剤安定性の問題)のように、成因が異なる粒子の識別ができることは逸脱調査や根本原因分析に極めて重要です。
✔ 逸脱調査・CAPA サポート
粒子の実画像と形状指標に基づく解析は、逸脱調査や是正処置(CAPA)の根拠資料として説得力のあるエビデンスとなります。
✔既存の SOP や報告書作成への影響
既存の検査手順(SOP)や検証済みLO光遮蔽法を残したままで運用できるため、既存検査体制やデータ体系を大きく変更する必要がありません。
📌 適合する粒子サイズ範囲
ラプター1788 は、USP <1788.3> のサブビジブル粒子評価に特化して設計されており、約1 µm〜100 µm の粒径範囲に最適化されています。これは、現代の注射剤・バイオ医薬品に含まれるサブビジブル粒子の主要なサイズ領域をカバーします。
医薬品品質管理での位置づけ・Raptor 1788 の強み
JP 日本薬局方には未明文化でも「USP <1788>」は既にに要求されています
背景
JP(日本薬局方)では現時点で、光遮蔽法(LO)中心(USP <788>相当)の枠組みが基本ではありますが、一方、実務では以下が強く求められています。
▪️異物の正体説明 ▪️逸脱時の原因特定 ▪️PMDA 審査・指摘への科学的根拠提示 ▪️数とサイズだけでは説明が足りないケースが増加
ラプター1788の価値
USP<1788>が求める「画像・形状に基づく補完評価」を先行導入でき、JP試験を実施しながら、将来の規制要求を見据えたデータを同時に取得が可能となります(JP対応を“守り”から“攻め”に変えられる)。
USP<787>/<788>
USP<1788>
👉 品質の最低要件を保証する試験 =「粒子数が基準以下か?」
👉 品質を説明できる試験 =「粒子は何で、品質リスクは何か?」
JP(日本薬局方)試験で最も弱い「粒子の説明責任」を補完
JP(日本薬局方)での従来LO光遮蔽法の弱点は、以下の区別ができない点にあります。
▪️タンパク質凝集体か? ▪️シリコン液滴か? ▪️異物(ガラス・ゴム・繊維)か?
PMDA(医薬品医療機器総合機構)からもよくされる指摘として、以下が挙げられます。
▪️その粒子は一体なんですか? ▪️なぜ問題ないと言えるのでしょうか?
ラプター1788を従来LO光遮蔽法と併用すると、粒子の画像、形状指標、分類結果を提示可能だけでなく、「数値」ではなく実像に基づく裏付けのある説明が可能となります。 ➡ JP試験結果に“説得力”と“防御力”が生まれる
USP<1788>の先取りは「将来の再試験リスク回避」になる
USP<1788>は「参考情報」ではありますが、FDA・EMAではすでに実務的に重視しており、JPも将来的に追随・反映される可能性が高くなっております。➡ USP <1788>を先取りすることで、JP対応試験に“説明力”と“将来耐性”を持たせます
ラプター1788を早い時期に導入すると、JP改訂時に新たな試験方法の構築や、過去データの取り直しが不要となり、ラプター1788での試験データが、そのまま将来の説明資料となります。➡「後追い対応コスト」を事前にゼロにできる
JP逸脱・CAPA対応で圧倒的に有利
JP逸脱時の実務課題として、LO結果だけでは根本原因が特定できなく、CAPA(是正処置・予防処置)が抽象的になる傾向があります。その状況に対し、PMDA(医薬品医療機器総合機構)からは、「科学的根拠が弱い」、「再発防止策が不十分」と指摘されております。➡ PMDA対応・逸脱調査で“困らないデータ”を今から取れます
ラプター1788を使用することで、粒子タイプ別に発生源推定でき、工程由来/容器由来/製剤由来の切り分けも可能となり、結果としてCAPAに直結するデータを提示できます。➡ 調査に強い品質部門を構築できる
JP試験を崩さずに導入できる点が最大の武器
導入ハードルが低い理由として、ラプター1788は既存のJP試験(LO光遮蔽法)を置き換えることなく、SOP(標準作業手順書)・バリデーションも大きく崩さず、補強する装置として“追加評価”という位置づけで導入可能な点で、現状のJP試験を守りながら、将来の規制強化に備えられます。➡ 導入時、品質部門・製造部門・QA の合意を取りやすい
ラプター1788 技術的アドバンテージ・測定評価比較
項目
Raptor 1788 の特徴
粒子サイズ範囲
1-100µm ※サブビジブル領域に最適化済み
既存LOとの関係
補完的に統合可能、置換不要
画像解析の有無
高品質粒子画像取得・形状解析対応
タンパク質凝集体・油滴・異物など類型的識別
サンプル代表性
高速測定流量で代表性を維持
データ品質補正
セル窓への付着粒子の誤カウント補正機能
運用負荷
既存SOP(標準作業手順書)を維持したまま導入
ラプター1788に期待できる実務的価値
✅ 品質部門(QC / QA)
- 逸脱調査のスピード向上
- CAPA の質向上
- PMDA/FDA対応の防御力向上
✅ 開発部門(R&D)
- 製剤安定性評価の高度化
- 凝集・相分離の早期検出
- 処方・工程変更時の影響評価
✅ 経営・戦略面
- 規制トレンド先取り
- 将来の試験再構築コスト削減
- グローバル規制対応力の強化