形状特性評価の重要性

動的画像解析

長年にわたり、粒子サイズは粒子特性評価における最も重要な指標の一つとして用いられてきました。現在広く利用されている粒子サイズ測定手法の多くは、すべての粒子が球形であると仮定し、その前提に基づいてサイズ結果を算出する間接測定技術です。
 
しかし、実際の産業材料に含まれる粒子の多くは、球形ではなく、不規則な形状をしています。そのため、サイズ情報のみで粒子の特性を十分に評価できているのかという点には、大きな課題が残されています。
 
例えば、下図の研磨粒子は、球形粒子として換算すると100.1µmの粒子として換算されます。しかし、この数値は「等価球径」に過ぎず、粒子本来の形状や実際の挙動を正確に反映しているとは限りません。形状を考慮しない評価では、材料特性やプロセス挙動を正しく反映されない状況が発生します。
 
そのため近年では、粒子サイズに加えて形状情報を同時に取得できる解析手法の重要性が高まっています。

測定結果
サイズ:100.1μm
幅:82μm・ 長さ:193.2μm
滑らかさ:0.509・ 円度:0.321
バウンディング長方形アスペクト比:2.36

粒子形状評価の進化と画像解析技術の役割

不規則な粒子形状は、粒子同士の相互作用、流動性、圧縮特性に大きな影響を与え、最終的に製品の品質や有効性に左右します。この重要性から、研究者たちは早くから顕微鏡等の直接測定技術を用い、粒子の大きさだけでなく形状に基づく特性評価を進めてきました。
顕微鏡観察は、時間と手間を要する手法ではあるものの、原材料粒子の状態を視覚的に把握できる定性的な情報を得られる点が大きな特長です。一方で、観察できる粒子数が限られるという制約もありました。
 
1990年代初頭になると、高性能なマシンビジョンカメラと高速コンピュータの進化により、粒子形状の評価は大きく前進しました。これにより、形状測定の標準化と、より多くの粒子を対象とした統計的な解析が可能となり、静的・動的のいずれの粒子に対しても、高速な画像解析が行えるようになりました。
商用の粒子形状解析システムは、1990年代から2000年代にかけて市場に登場しました。当初は、レーザー回折などの粒子サイズのみを測定する確立技術と競合する新しい手法であったため、業界への普及には長年の啓発と教育が必要でした。その後、2014年頃には動的画像解析システムが開発され、既存のサイズ測定装置に形状評価機能を追加する補完的技術として活用されるようになりました。高い解像度と柔軟性を備えたこの技術は、現在ではオンライン粒子解析をはじめとする幅広い用途で導入が進んでいます。

ではラプター動的画像解析ではどのような情報を提供しているのか

粒子サイズは、原材料評価において長年にわたり広く用いられてきた、最も確立された測定指標の一つです。そのため、動的画像解析装置では、形状パラメータの一つとして粒子サイズを常に測定・表示します。
これは、粒子サイズが業界標準として重要であることに加え、既存の粒度分布測定手法との比較や相関確認を行いたいという高いユーザーニーズが挙げられます。動的画像解析により得られる粒子サイズデータは、従来手法との比較検討やデータ移行を円滑に行う上でも非常に有効です。なお、異なる測定技術や粒子形状による粒子サイズ結果の違いについては、別ページにてご用意している「粒子測定技術」をご参照ください。

動的画像解析は数値ベースの解析手法であり、粒子を一つひとつ個別に測定します。そのため、粒子サイズだけでなく、粒子数や粒子数濃度といった情報を高精度に取得できる点が特長です。これらの情報は、多くの産業分野において重要な評価指標となります。

動的画像解析は実際の粒子を画像として捉えて測定する直接測定技術です。推定や仮定に基づくのではなく、粒子そのものを評価するため、信頼性の高い結果が得られます。
 
この特長により、一般的な体積基準粒子サイズ分布に加え、個数基準粒子サイズ分布も同時に結果出力することが可能で、微細粒子から大粒子までサンプル全体を多角的に把握することが可能です。

上記の例では、同一サンプルについて個数基準分布と体積基準分布の両方を示しています。両方の分布を正確に把握することは、粒子特性を正しく理解するうえで非常に重要です。
個数基準分布は、試料中に含まれる微細粒子の量を把握・管理するために有効です。微細粒子は、大きい粒子の流動性に影響を与える場合があるほか、フィルターの目詰まりや、工程に悪影響を及ぼす粒子破片の存在を示す重要な指標となります。
 
一方、体積基準分布は、原料中の凝集体や大きい粒子の存在を把握するために不可欠です。これらの粒子は、最終製品の品質や性能に直接影響を及ぼす可能性があるため、体積ベースで正確に評価することが求められます。
動的画像解析は個数ベースの直接測定手法であり、測定されたすべての粒子がヒストグラムに反映されます。個数基準分布と体積基準分布を併せて確認することで、サンプルの特性を多角的に評価し、工程管理や品質向上に役立てることができます。
 
動的画像解析は個数ベースの直接測定技術であるため、すべての粒子がヒストグラム上に表示されます。そのため、粒子集団全体を客観的かつ高い信頼性で評価することが可能です。
近年、多くの研究者やユーザーは、粒子形状測定が単なる特性評価にとどまらず、粒子を識別するための有効なツールであることを理解しています。形状解析は、混合サンプル中に含まれる異なる粒子の割合を定量的に把握するために、広く活用されています。

例えば、サイズヒストグラムのみを確認すると、すべての粒子が約50µmの範囲に分布し、いくつかのピークを持つ単一の粒子集団であるように見える場合があります。サイズ情報だけに基づいてプロセス評価を行う場合、専門的な知識を持つ解析者が統計値や分布形状を慎重に読み解く必要があります。
 
しかし、形状情報を加えて解析すると、実際にはこのサンプルが3種類の異なる形状の粒子で構成されていることが明確に分かります。このように、動的画像解析による形状測定は、サイズだけでは得られない本質的な情報を提供し、より正確なサンプル理解とプロセス判断を可能にします。

これら3種類の粒子は、サイズのみの測定ではいずれも約35 µmと評価されます。これは、粒子を球状と仮定したサイズ情報だけに基づく結果です。
しかし実際には、粒子の形状が異なれば、混合性、圧縮性、流動性などのプロセス挙動は大きく異なります。サイズ情報だけでは、こうした挙動の違いを正しく捉えることはできません。
その為、異なる粒子を正確に識別し、それぞれの割合を定量化するには、サイズに加えた形状測定が不可欠です。動的画像解析による形状評価は、プロセス理解の深化と製品品質の最適化に大きく貢献します。

動的画像解析では、測定されたすべての粒子のサムネイル画像を同時に取得・表示します。各粒子について30以上の形状パラメータを自動で算出するため、粒子同士の違いを明確に識別できるだけでなく、実際の粒子画像を客観的な証拠として確認することが可能です。
 
これにより、研究者が統計グラフや数値データのみに依存して判断する必要がなくなり、解析結果の信頼性と理解度が大きく向上します。多くのケースでは、粒子サイズではなく形状の違いによって、原材料のロット差や品質の違いを明確に識別することができます。
 
また、粒子サムネイル画像を確認することで、検出された大きい粒子が気泡、凝集体、異物(汚染物質)であるかどうかを容易に判別でき、工程管理や品質評価において非常に有効な情報を提供します。

動的画像解析では、粒子サイズ以外にどのような形状測定を提供するのか

ラプターは、6 種類の形状モデルに基づいて、サイズおよび形状に関する 30タイプ以上の測定指標を搭載しております。任意の2つの指標を相関させて解析でき、希少形状粒子や異常粒子を効率的に抽出・可視化することが可能となりました。すべての形状モデルが常に必要となるわけではありませんが、多くの用途において 重要な評価指標となります。例えば、棒状粒子では「長さ」や「アスペクト比」が重要な管理項目となり、研磨材や粉体では「円形度」や「滑らかさ」のモニタリングが製品性能に直結します。
 
そのため、対象サンプルに対してどの形状モデルが粒子の主要な性能指標となるかを見極めることが重要です。球状粒子と棒状粒子が混在するサンプルにおいて、分離性や圧縮性に課題がある場合には、円形度(円形モデル)と長さ(長さモデル)の比率をモニタリングすることで、粒子組成や挙動を的確に評価できます。
 
このようにラプターは、用途や目的に応じた柔軟で実用的な形状解析を可能にし、粒子特性の理解と工程管理を強力にサポートします。
 


粒子特性形状 6モデル

: 等価面積(ヘイウッド)直径、等価周囲径、境界円直径、真円度、形状係数、コンパクト性

楕円: 相当面積直径、境界楕円直径、楕円率

 

 
長方形: 境界長方形の長さ、幅、アスペクト比、長方形度
 
多角形: 多角形の方向、凸性、内角
 
繊維: 長さ、幅、アスペクト比、カール
 
 
不規則形状:フェレットの長さ、幅、アスペクト比、平均半径、滑らかさ
 

ピクセル強度:不透明度と白の割合

不透明度:粒子の強度の平均値は、0(黒)と255(白)として計算されます。不透明度は、256 - (強度の平均値)/256として計算されます。尚、0 は完全に透明、1 は完全に不透明となります。
白部分:解析時に設定した暗部しきい値よりも明るい領域が、粒子全体に占める割合の指標です。粒子表面の明るさやコントラストの違いを定量的に評価し、表面状態や材質差の判別に活用。

粒子形状が役立つ理由

近年、粒子形状測定装置は、特性評価にとどまらず粒子の同定ツールとしても活用できることが広く認識されています。
特に特性評価では、混合サンプル中に含まれる異なる粒子の割合を形状解析により定量化する用途で多く用いられています。例えば、混合工程後における賦形剤と有効成分の比率評価や、錠剤化前の原料状態を正確に把握する測定などに活用され、製品品質の安定化に貢献します。
 
形状解析は、稀にしか発生しない粒子事象の検出にも有効です。用途によっては、汚染粒子や凝集体の特定・定量が難しいケースもありますが、形状指標の相関プロットを活用することで、対象となる粒子を効率的に抽出・特定することが可能です。さらに、選択した粒子のサムネイル画像を客観的な証拠として確認できるため、分析結果の信頼性を高め、確実な判断をサポートします。
 
動的画像解析技術による粒子形状解析には、さまざまな特長と利点があります。粒子サイズの測定や粒子イベントの識別、粒子の分類にとどまらず、粒子一つひとつを可視化し、多角的に評価できる豊富な解析ツールを備えている点が大きな特長です。これにより、従来手法では得られなかった詳細で信頼性の高い粒子情報を提供します。